「YouTubeで採用活動ができると聞いたけど、うちの会社でも本当に使えるの?」
そんな疑問を持っている経営者・人事担当者の方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、YouTubeは採用に使えます。
ただし、「とりあえず動画を作って投稿する」では効果は出ません。
あなたの会社の採用課題に合わせたアプローチを選ぶことが、成果を出す上でもっとも重要なポイントです。
この記事では、採用目的でYouTubeを活用する2つのパターンとそれぞれの始め方を具体的にお伝えします。
YouTubeの再生回数に振り回されることなく、採用につながる動画運用の設計ができるようになることを目指しています。
YouTubeが採用に使われているのか
文字より動画で企業を知ろうとする求職者が増えている
求職者が企業を調べる方法は、ここ数年で大きく変わっています。求人票や企業ホームページだけでは判断しきれず、「実際の職場の雰囲気を知りたい」「そこで働く人の話を聞きたい」というニーズが高まっています。
moovyが2025年に実施した採用動画トレンド調査によると、就職・転職活動者の約8割が採用動画を視聴しているというデータがあります。また、エン転職が2025年4月に1,393名を対象に行った調査では、転職活動時に採用動画を1本以上視聴した人は36%にのぼり、約7割が「応募前に採用動画を見たい」と回答しています。
さらに、同調査では採用動画を見ることで42%が「企業への志望度に影響がある」と答えています。動画は見てもらえるだけでなく、応募の意思決定にも直接影響しているのです。
求職者が動画でこそ知りたい情報として上位に挙がるのは、「1日の流れ」「職場の雰囲気」「入社理由」といった、求人票では伝わりにくいリアルな情報です。テキストや写真では伝えきれない「この会社で働くイメージ」を動画で届けられることが、採用におけるYouTubeの最大の強みです。
少ない再生回数でも採用につながる理由
YouTubeを採用に活用することを検討すると、こんな不安が出てくるかもしれません。「再生回数が少ないと意味がないのでは?」
しかし、採用目的のYouTubeにおいて再生回数はそれほど重要ではありません。
集客目的のYouTubeと採用目的のYouTubeでは、動画を見る人の「状態」が根本的に異なります。
集客の場合は幅広い層に認知を広げることが目的になるため、再生回数が成果の指標になりやすいです。
一方、採用の場合は「あなたの会社に興味を持った求職者」が見ることがほとんどです。
求人媒体で会社名を検索してから動画を探す人、採用サイトから動画にアクセスする人、知人からの紹介で動画を見る人——いずれも「この会社のことをもっと知りたい」という気持ちを持った状態です。つまり、再生回数が100回だったとしても、その100人が御社への入社を検討している可能性が高い求職者である場合、採用への影響は大きくなります。
採用においては「どれだけ多くの人に届いたか」より「届いた人が応募したくなったか」のほうがはるかに重要です。
採用目的でのYouTubeの2つの活用パターン
採用目的でYouTubeを活用する方法は、大きく2つのパターンに分けられます。
どちらが正解ということはなく、あなたの会社が今どんな採用課題を抱えているかによって、選ぶべきアプローチが変わります。
パターン①|歩留まり改善・離職率低下のためのコミュニケーションツール型(10本程度)
このパターンは、すでに一定数の応募は集まっているものの、「内定辞退が多い」「入社後に早期離職が起きている」「面接での候補者の反応がいまひとつ」といった課題を感じている会社に向いています。
具体的な動画の内容としては、以下のようなものが中心になります。
- 社長メッセージ(なぜこの事業をしているのか、どんな会社にしたいのか)
- 社員インタビュー(入社の決め手、仕事のやりがい、実際の一日)
- 職場環境・オフィスツアー
- 仕事紹介・業務の流れ
- 先輩・後輩の対談
これらを5〜10本程度まとめて制作し、採用サイトや求人媒体の概要欄に掲載するイメージです。
求職者が「応募しようかどうか迷っている段階」や「面接前に会社のことをもっと知りたい段階」で見てもらうことを想定しています。
このパターンの目的は再生回数を増やすことではなく、「この会社で働くイメージを持ってもらうこと」と「自社に合わない人を事前に見極めてもらうこと」です。
動画を見た上で応募してくる候補者は、会社のことをある程度理解した状態で来るため、面接での温度感が変わります。
内定承諾率の改善や、入社後のギャップ低減にも効果が出やすいアプローチです。
パターン②|母集団形成のための継続投稿型
このパターンは、「そもそも応募自体が少ない」「特定の職種・属性の人材に出会えない」「求人媒体への掲載費が年々重くなっている」といった課題を感じている会社に向いています。
求人媒体に依存した採用では、媒体に登録しているユーザーにしかリーチできません。
一方でYouTubeを継続的に運用することで、求人媒体に登録していない潜在的な求職者層、つまり「転職は考えていないけど、なんとなく会社の動画を見ていた」という人にもアプローチできます。
継続投稿によって会社のことを知ってもらい、ファンになってもらい、「この会社なら転職したい」という気持ちを引き出すのが、このパターンの狙いです。
ただし、このパターンには時間がかかります。半年・1年という単位で継続する覚悟が必要です。「3本投稿したけど効果がなかった」で止めてしまっては意味がありません。継続できる体制と企画の仕組みを整えた上で取り組むことをおすすめします。
どちらを選ぶべきか:自社の採用課題から逆算する
2つのパターンの違いをシンプルにまとめると、以下の通りです。
- 応募数は足りているが質・定着に課題がある → パターン①(コミュニケーションツール型)
- そもそも応募数が足りていない・特定層にリーチできていない → パターン②(継続投稿型)
また、リソースの観点からも考える必要があります。パターン①は初期に集中して制作するため、外部に依頼しやすいです。パターン②は継続が前提のため、内製化できる体制を整えることが長期的には重要になります。
まず自社の採用課題がどちらにあるかを整理した上で、アプローチを選ぶようにしてください。
自社採用なら「密着動画」がおすすめな理由
パターン②の継続投稿型で自社チャンネルを運用していく場合、もっともおすすめしたい動画の形式が「密着動画」です。
ストーリー性と感情の動きがある動画が響く
密着動画とは、社員の一日に密着したり、プロジェクトの裏側を追ったりする形式の動画です。「〇〇さんの1日に密着してみた」「新入社員が初めての営業に挑戦した日」のような企画が当てはまります。
なぜ密着動画がおすすめかというと、「ストーリー性」と「感情の動き」があるからです。
社員インタビューや会社紹介動画は、情報として正確でも「見ていて飽きてくる」という弱点があります。一方、密着動画には「最初は緊張していたけど、最終的に上手くいった」「先輩に怒られたけど、そこから成長できた」といった感情の起伏があります。視聴者は登場人物に感情移入しながら動画を見るため、最後まで見てもらいやすく、記憶にも残りやすいです。
求職者が求めているのは「この会社で働くリアルなイメージ」です。密着動画はそのニーズに直接応えられる形式です。
密着動画で伝えるべき3つの要素
密着動画を制作する際に意識してほしい要素が3つあります。
① 仕事の「なぜ」を伝える 何をしているかだけでなく、なぜその仕事に取り組んでいるのかを伝えてください。「この仕事を通じて何を実現したいのか」「会社のどんなビジョンに共感して入社したのか」——こうした内面が見えることで、視聴者は単なる職場情報ではなく「自分もこの環境で働きたいか」を判断できます。
② 失敗・困難のシーンも入れる うまくいっている場面だけを切り取ると、視聴者は「本当のことを言っていない」と感じます。困っている場面、悩んでいる場面、先輩に相談している場面——こうしたリアルなシーンが入ることで信頼感が増し、ミスマッチの防止にもつながります。
③ 人柄が伝わる「素」のシーンを残す 編集で整えすぎると、人柄が見えなくなります。ランチの会話、移動中のやりとり、仕事が終わった後の一言——こうした「素」の部分が見えることで、視聴者は「この人と一緒に働いたらどうだろう」とイメージしやすくなります。
企業チャンネルにありがちなのが綺麗に見せようとすること。
実はこれが逆効果で全て見せるぐらい勢いで投稿しないと目が肥えている視聴者の心を動かすことはできません。
もちろん、利益や社長の役員報酬額など生々しい部分は伏せて問題ありません。
ターゲット層によってはショート動画を検討する
YouTubeの動画には横型動画と、60秒以内の「YouTubeショート」があります。
採用目的の場合、どちらを選ぶかはターゲット層によって変わります。
20代・未経験者採用はショート動画との相性がいい
20代の未経験者をターゲットにした採用の場合、横型の長尺動画よりもショート動画を検討することをおすすめします。
20代はTikTokやInstagramリールなど、縦型の短尺動画に慣れ親しんでいる世代です。LINEリサーチの調査でも、ショート動画を「ほぼ毎日見ている」割合は若い年代ほど高いことが示されています。横型の5分・10分動画を最後まで見てもらうことのハードルは、20代に対しては思った以上に高い可能性があります。
ショート動画であれば、通勤中やスキマ時間にサクッと見てもらいやすく、気に入ってもらえれば他の動画も見てもらえる入口になります。
横型とショートの使い分け方
横型とショート、どちらかだけを選ぶ必要はありません。うまく組み合わせることで、より多くの求職者に届けることができます。
ひとつの考え方として、以下のような使い分けが参考になります。
- ショート動画:会社や仕事の「一場面」を切り取って認知を広げる(入口)
- 横型動画:密着・インタビューなど「深掘り」コンテンツで理解を深めてもらう(出口)
ショートを見て興味を持った求職者が、横型動画でより詳しく会社のことを知るという導線を設計することで、双方の強みを活かせます。
ターゲットの年齢層・媒体接触習慣に合わせて、最適な形式を選ぶようにしてください。
YouTubeが採用に効く会社・効かない会社
YouTubeは全ての会社の採用に等しく効果が出るわけではありません。「うちの会社に向いているのかどうか」を事前に判断しておくことも重要です。
ビジョンを掲げて実行している会社に向いている理由
YouTubeが採用で特に効果を発揮しやすいのは、「会社としてビジョンを掲げて、それを実際に実行している会社」です。
なぜかというと、YouTubeの動画は「言葉」だけでなく「映像」でメッセージを伝えられるからです。「社会をこう変えたい」「こんな未来をつくりたい」という想いがあり、日々の仕事の中でそれを体現しているなら、それを動画で見せることができます。
ビジョンに共感した求職者が応募してくるため、入社後の定着率も上がりやすいです。「この会社のやろうとしていることに関わりたい」という動機で入社する人と、「条件が良かったから」で入社する人では、その後の働き方が変わってきます。
逆に言うと、特にビジョンがなく「良い人材を採用したい」だけを目的にYouTubeを始めても、発信内容が薄くなり継続が難しくなります。
向いていないケースも正直に伝える
正直にお伝えすると、すべての会社にYouTube採用が向いているわけではありません。
たとえば、「地元密着で採用エリアが狭い」「採用ターゲットが特定の資格・経験者に絞られている」「採用人数が年間1〜2名と少ない」といったケースでは、YouTube採用のコストパフォーマンスが低くなる可能性があります。
また、「動画に出演できる社員がいない」「撮影・編集のリソースがない」「継続投稿が難しい体制である」という場合も、まずは体制を整えることを優先したほうが良いです。
YouTubeを始める前に、「本当に自社の採用課題に合った手段かどうか」を冷静に判断することをおすすめします。
採用向けYouTubeチャンネルの効果測定方法
採用目的でYouTubeを運用する際、「どうやって効果を測ればいいのかわからない」という声をよく聞きます。再生回数やチャンネル登録者数を見ていても、採用への効果はわかりません。採用目的に合った効果測定の方法を持っておくことが重要です。
何を見て応募したか必ず聞く
もっともシンプルで確実な方法は、応募者に「何を見て応募しましたか?」と必ず聞くことです。
採用管理システムの応募フォーム、もしくは面接の冒頭で「弊社を知ったきっかけを教えてください」と聞くだけで構いません。「YouTubeを見て」「動画で社員の話を聞いて」という回答が増えてきたら、YouTubeが採用に機能している証拠です。
アナリティクスの数字を分析するより、このアンケートの方がはるかに実態を把握できます。YouTubeの視聴数が増えていても応募に繋がっていなければ意味がありませんし、再生数が少なくても応募者の多くがYouTubeを見て来ているなら、動画の設計は機能していると判断できます。
このデータを積み重ねることで、「どの動画が応募につながりやすいか」「動画を見た応募者と見ていない応募者で内定承諾率に差があるか」といった分析もできるようになります。
概要欄リンクと公式LINEで求職者との接点をつくる
YouTube動画の「概要欄」には必ず採用サイトや応募フォームへのリンクを設置してください。
動画を見て興味を持った求職者が、次のアクションに進める導線を用意しておくことが重要です。
また、採用目的で公式LINEを運用しているのであれば、動画の概要欄に公式LINEの登録リンクを載せることで、まだ応募の意思決定をしていない求職者とも接点を持つことができます。
「採用サイトは見たけど、まだ応募するかどうか迷っている」という求職者に対して、公式LINEを通じて定期的に情報を届けることで、徐々に応募意欲を高めていくことができます。
求職者との接点をどこで持ち、どう育てるかまで設計することがYouTube採用を機能させるために欠かせません。
採用ミスマッチを防ぐためにYouTubeでできること
採用においてもっとも避けたいのは、入社後に「思っていた会社と違った」というミスマッチです。
早期離職は会社にとっても求職者にとっても大きなロスになります。
求職者の期待値のズレを動画で事前に解消する
採用ミスマッチの多くは、「求職者が入社前に持っていたイメージ」と「実際の職場の現実」のズレから生まれます。
求人票や企業ホームページは、どうしてもポジティブな情報に偏りがちです。「活躍できる環境」「風通しの良い職場」といった表現は、どこの会社にも書いてあるため、求職者には具体的なイメージが伝わりません。
一方、YouTubeの動画では「リアルな職場の様子」を見せることができます。社員が実際にどんな仕事をしているか、どんな雰囲気の中で働いているか、どんな悩みを抱えながら成長しているか——これらを正直に見せることで、求職者側の期待値を現実に近づけることができます。
「この動画を見て応募した」という求職者は、ある程度の現実を理解した上で来てくれます。入社後のギャップが小さくなることで、早期離職のリスクも下がります。
良い面だけでなく、「こんな大変さがある」「こういうことが苦手な人には向かないかもしれない」といった情報を動画の中に自然に含めることは、ミスマッチ防止に大きく貢献します。
スクリーニングは書類・面接で行う
「YouTubeで採用ミスマッチをゼロにできるか」というと、それは難しいです。動画だけで人材の適性をすべて判断することはできません。
スキルや経験・人物面のスクリーニングは、書類選考や面接で行うのが基本です。YouTubeの役割はあくまで「会社のことを正直に伝えて、自社に合う人に応募してもらいやすくする」ことです。
動画による情報開示と、選考プロセスによるスクリーニングを組み合わせることで、採用精度を高めていくことをおすすめします。
まとめ|採用YouTubeは「設計」で結果が変わる
この記事でお伝えしたポイントを整理します。
採用目的でYouTubeを活用するアプローチは、大きく2つです。歩留まり改善・離職率低下を目的としたコミュニケーションツール型(10本程度の集中制作)と、母集団形成を目的とした継続投稿型です。どちらが正解ではなく、自社の採用課題に合わせて選ぶことが重要です。
自社採用での継続投稿では「密着動画」が特におすすめで、ストーリー性と感情の動きがある動画が求職者の心を動かします。20代・未経験者をターゲットにする場合は、ショート動画の活用も検討してみてください。
効果測定はアナリティクスの数字よりも、「何を見て応募したか」のアンケートが実態把握に役立ちます。概要欄へのリンク設置と公式LINEの活用で、求職者との接点を丁寧につくっていくことも大切です。
採用YouTubeで成果を出している会社に共通しているのは、「再生回数を目標にしていない」という点です。誰に、何を、どのタイミングで届けるか——この設計ができているかどうかが、結果の差になります。
「YouTubeを採用に使ってみたいけど、何から始めればいいかわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。事業内容や採用課題をヒアリングした上で、あなたの会社に合った動画活用の設計をご提案します。
